壱、始計篇 6 兵は詭道なり

孫子の兵法

 兵は詭道なり。故に能なるもこれに不能を示し、用なるもこれに不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれに備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれをみだし、卑にしてこれを驕らせ、佚にしてこれを労し、親にしてこれを離す。その無備を攻め、その不意に出づ。これ兵家の勝にして、先には伝うべからざるなり。


 戦争は、しょせん、だまし合いである。

 たとえば、できるのにできないふりをし、必要なのに不必要と見せかける。遠ざかるとみせかけて近づき、近づくと見せかけて遠ざかる。有利と思わせて誘い出し、混乱させて突きくずす。充実している敵には退いて備えを固め、強力な敵に対しては戦いを避ける。わざと挑発して消耗させ、低姿勢に出て油断をさそう。休養十分な敵は奔命に疲れさせ、団結している敵は離間をはかる。敵の手薄につけこみ、敵の意表をつく。

 これが勝利を収める秘訣である。これは、あらかじめこうだときめてかかることはできず、たえず臨機応変の運用を心がけなければならない。


【仕事・職場で】

 相手の裏をかくことが勝利につながるのだが、裏をかくためには相手の実を把握していなくてはできない。逆に言えば、こちらの実を把握されていては相手の有利にはたらく。

 取り掛かりやすいことは、自分の実をつかませないことである。「能ある鷹は爪を隠す」など、孫子兵法以外でも同じことを考えている。

 その上で、相手の実をつかむことができれば、争う前から勝敗は決しているようなものである。


★常に100%の力を出していると、それが当たり前と思われてしまう。

★日頃70%で働いて、いざというときに90%の力を発揮すると高く評価される。仕事のできるできないは、相対評価だからである。

★実力の隠し過ぎには要注意。まわりの人との相対評価をされるので、まわりの実に応じた力量を発揮する必要はある。あまりに低い力を見せ続けると、処分の第一候補にされてしまう。


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