弐、作戦篇 2 兵は拙速を聞く

 その戦いを用うるや、勝つも久しければ、すなわち兵を鈍らし鋭を挫く。城を攻むれば、則ち力屈す。久しく師をさらさば、則ち国用足らず。それ兵を鈍らし鋭を挫き、力を屈し貨をつくさば、則ち諸侯、その弊に乗じて起こらん。智者ありといえども、その後を善くすること能わず。故に兵は拙速を聞くも、いまだ巧の久しきをみざるなり。それ兵久しくして国利あるは、いまだこれあらざるなり。故にことごとく用兵の害を知らざれば、則ちことごとく用兵の利を知ること能わざるなり。


 たとえ戦って勝利を収めたとしても、長期戦ともなれば、軍は疲弊し、士気も衰える。城攻めをかけたところで、戦力は底をつくばかりだ。長期にわたって軍を戦場にとどめておけば、国家の財政も危機におちいる。

 こうして、軍は疲弊し、士気は衰え、戦力は底をつき、財政危機に見舞われれば、その隙に乗じて、他の諸国が攻めこんでこよう。こうなっては、どんな知恵者がいても、事態を収拾することができない。

 短期決戦に出て成功した例は聞いても、長期戦に持ちこんで成功した例は知らない。そもそも、長期戦が国家に利益をもたらしたことはないのである。それ故、戦争による損害を十分に認識しておかなければ、戦争から利益をひき出すことはできないのだ。


【仕事・職場で】

 争えば、短期間で収めても、長期間にわたっても、結果として相手からうとまれることに変わりはない。ただし長期間争った場合は、当事者以外のまわりの人が、自分に対して良くない印象を持ちやすくなる。

 また、長期間争うことは、時間・精神・労力をより多く費やすのだから、できるだけ物事は短期間に収めるべきである。


★論争は長引くと、論点が不明になることがある。論争になったら冷静になって、相手が横道に反れることを許さず、短時間で収めること。長時間になりそうなら、当事者だけの空間へ移動し、論議すること。

★なんでも勝てば良いというものではない。負けてでも早期収拾をはかることによって、自分の被る損害を最小にできることは多い。大切なことは、実利をとることであって、勝利することではない。


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