九、行軍篇 6 利を見て進まざるは労るるなり

孫子の兵法

 杖つきて立つは、飢うるなり。汲みて先ず飲むは、渇するなり。利を見て進まざるは、労るるなり。鳥の集まるは、虚しきなり。夜呼ぶは、恐るるなり。軍擾るるは、将重からざるなり。旌旗動くは、乱るるなり。吏怒るは、倦みたるなり。馬を殺して肉食するは、軍に糧なきなり。軍、缻を懸くることなくその舎に返らざるは、窮寇なり。諄諄翕翕として徐に人と言うは、衆を失うなり。


 敵兵が杖にすがって歩いているのは、食料不足におちいっているのである。

 水汲みに出て、本人がまっさきに水を飲むのは、水不足におちいっているのである。

 有利なことがわかっているのに進攻しようとしないのは、疲労しているのである。

 敵陣の上に鳥が群がっているのは、すでに軍をひきはらっているのである。

 夜、大声で呼びかわすのは、恐怖にかられているのである。

 軍に統制を欠いているのは、将軍が無能で威令が行なわれていないのである。

 旗指物が揺れ動いているのは、将兵に動揺が起こっているのである。

 軍幹部がむやみに部下をどなりちらすのは、戦いに疲れているのである。

 馬を殺して食らうのは、兵糧が底をついているのである。

 将兵が炊事道具をとりかたづけて兵営の外にたむろしているのは、追いつめられて最後の決戦をいどもうとしているのである。

 将軍がぼそぼそと小声で部下に語りかけるのは、部下の信頼を失っているのである。


【仕事・職場で】

 物事には因果関係があるということである。問題というのは、対症療法では根本解決には至らない。今起きている現象の根本を解き明かし、その根本を解決することが、現象の解消となり、問題を繰り返さないことにもつながる。それは時間と労力、費用の節減となる。


★争わないですませるためには、争いの原因を見極め、解決することである。

★業務でイレギュラーが起こったら、そのイレギュラーの法則性を探り理解しておくことで、同様のイレギュラーが再度起きたときにスムーズな対応ができるようになる。よって、イレギュラーはイレギュラーではなくなる。

★論議がまとまらないのは、核心について論議せず、表層について論議しているからである。論議が堂々巡りになっているのなら、表層にとらわれて核心を解く材料がそろっていない状態で論議しているのである。論議が平行線になっており、核心が相反するのなら、それ以上論議をしても時間の無駄である。


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