故にこれを策りて得失の計を知り、これを作して動静の理を知り、これを形して死生の地を知り、これに角れて有余不足の処を知る。故に兵を形するの極は、無形に至る。無形なれば、則ち深間も窺うこと能わず、智者も謀ること能わず、形に因りて勝を衆に錯おくも、衆、知ること能わず。人みなわが勝つ所以の形を知るもわが勝を制する所以の形を知ることなし。故にその戦い勝つや復びせずして、形に無窮に応ず。
勝利する条件は、次の四つの方法でつくり出される。
一、戦局を検討して、彼我の優劣を把握する。
二、誘いをかけて、敵の出方を観察する。
三、作戦行動を起こさせて、地形上の急所をさぐり出す。
四、偵察戦をしかけて、敵の陣形の強弱を判断する。
先にも述べたように、戦争態勢の神髄は、敵にこちらの動きを察知させない状態―――つまり「無形」にある。こちらの態勢が無形であれば、敵側の間者が陣中深く潜入したところで、何もさぐり出すことはできないし、敵の軍師がいかに知謀にたけていても、攻め破ることができない。
敵の態勢に応じて勝利を収めるやり方は、一般の人にはとうてい理解できない。かれらは、味方のとった戦争態勢が勝利をもたらしたことは理解できても、それがどのように運用されて勝利を収めるに至ったのかまではわからない。
それ故、同じ戦争態勢をくり返し使おうとするが、これはまちがいである。戦争態勢は敵の態勢に応じて無限に変化するものであることを忘れてはならない。
【仕事・職場で】
固定観念に縛られていては、情勢の変化に対する反応ができなかったり、遅れたりする。柔軟な姿勢、臨機応変な対応ができるかどうかが大切である。
また、自分は相手の情報をできるだけつかみ、相手には自分の情報の全容をつかませないことが、争いを有利にすすめるうえで肝要となってくる。情報を把握している者が的確に対応を変化させることができる。情報を把握していなければ、どう対応すべきか判断を誤って当たり前である。
★慣例や前例の歴史や良い部分は学びつつ、どこは変えるべきか、どこは変えて良いのかをあらかじめ理解しておくことで、情勢の変化に対応していくことができる。
★固定概念や先入観ではなく、最新の情報を把握するべきである。情報無くして道をひらくことはできない。
★「いきあたりばったり」と「臨機応変」は違う。前者は情報を持たない変化であり、後者は情報に応じた変化である。
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