弐、作戦篇 3 智将は敵に食む

 善く兵を用うる者は、役、再籍せず、糧、三載せず。用を国に取り、糧を敵に因る。故に軍食足るべきなり。国の師に貧するは、遠くおくればなり。遠くおくれば、則ち百姓貧し。師に近き者は貴売す。貴売すれば、則ち百姓、財つく。財つくれば、則ち丘役に急なり。力屈し財つき中原の内、家に虚し。百姓の費え、十にその七を去る。公家の費え、破車罷馬、甲冑矢弩、戟楯蔽櫓、丘牛大車、十にその六を去る。故に智将は務めて敵に食む。敵の一鍾を食むは、わが二十鍾に当たり、キ粁一石は、わが二十石に当たる。


 戦争指導にすぐれている君主は、壮丁の徴発や糧秣の輸送を二度三度と追加することはしない。装備は自国でまかなうが、糧秣はすべて敵地で調達する。だから、糧秣の欠乏に悩まされることはない。

 戦争で国力が疲弊するのは、軍需物資を遠方まで輸送しなければならないからである。したがって、それだけ人民の負担が重くなる。また、軍の駐屯地では、物価の騰貴を招く。物価が騰貴すれば、国民の生活は困窮し、租税負担の重さに苦しむ。かくして、国力は底をつき、国民は窮乏のどん底につきおとされ、全所得の七割までが軍事費にもっていかれる。また、国家財政の六割までが、戦車の破損、軍馬の損失、武器・装備の損耗、車両の損失などによって失われてしまう。

 こういう事態を避けるため、智謀にすぐれた将軍は、糧秣を敵地で調達するように努力する。敵地で調達した穀物一鍾は自国から運んだ穀物の二十鍾分に相当し、敵地で調達した飼料一石は自国から運んだ飼料の二十石分に相当するのだ。


【仕事・職場で】

 自分以外の資力・能力を上手につかうことができれば、すべてを自分でまかなうより効率が良い。無いものをなげくのではなく、何があるのかをしっかりと調べ、利用していくべきである。


★労働法、労働協約、就業規則、雇用契約書は、自分以外の力を使用するマニュアルなので軽んじないこと。これらに著されていることを、会社も上司も同僚も覆すことは困難だからである。


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